現時点での答えは 〜「三角の距離は限りないゼロ 4」感想〜
タイトル:三角の距離は限りないゼロ 4
作者:岬 鷺宮
イラスト:Hiten
「三角の距離は限りないゼロ」の4巻
衝撃の結末だった文化祭から物語は修学旅行へ
いよいよ前半が完結します
- 波乱の修学旅行…!?
前巻のラストで秋玻から「別れ」を告げられた四季
文化祭以降の四季はもう別人になってしまいました
身体から中身が抜けた空っぽのような存在になってしまったのです
その上で秋玻と春珂はこうなってしまったのは自分達の責任と感じ、修学旅行(宮前高校の修学旅行は3日間で大阪、京都、奈良を訪れる色々ハードな修学旅行です)を通じて四季を元に戻そうとするのですがその修学旅行のグループ分けは他のクラスメートと組めるということ、更に男女の制限がないということもあり、
A:古暮(2巻で修司にコクった女子)、Omochi(3巻で登場したトラックメイカーであり、古暮の従姉妹)、晃、四季
B:秋玻/春珂、伊津佳、修司、時子
となってしまうのです
こうなると四季と秋玻、春珂の過ごす時間が減ってしまうのは必然…
しれっと晃と時子が巻き添え食らってないか(笑)※ちなみにこの巻でようやく時子や古暮、Omochiも挿絵が描かれます。時子の容姿はあまり変化してません。
それでも移動時間など限られた時間でも四季と接しようとしますが、思わぬ障壁となったのはまさかの伊津佳
伊津佳が旅マニアなのでこういう旅行のこだわりが半端ないのです
なので秋玻と春珂の願いはなかなか叶わない…
こう書くと修学旅行もシリアステイストなのかと思ってしまうかもしれませんが、これまでと比較するとこの巻はコミカルです
伊津佳が秋玻達を振り回したり、四季と秋玻、春珂は梅田の地下街で迷ったり伊津佳達が男子部屋に忍び込もうとしたりと…
今まで一番読みやすかったりします
時子が晃大好きということを伺わせる一面もあったりします
- 四季の感情を取り戻せ!!
そんな状況が一変するのは2日目
Omochiと古暮が秋玻、春珂の手助けを名乗り出たのです
というのは流石に古暮も四季の変化に気付いていたようで
そりゃ、感情を見せないような状態になったら誰でも違和感に気付くよね…
人間はロボットみたく表情を出さない生き物じゃないから
そんなOmochiと古暮によって決行されたのは矢野の反応を見る作戦
1つは激辛ラーメン(蒙古タン麺みたくめちゃくちゃ辛そうなイメージ)を食べさせ反応を見るのと、晃に時子と「あれ」をやったのか尋ね反応を見るもの
色々、晃被害食らってないか?
でも流石にこれだけ探りを入れたら当然矢野も気付きます
という訳でOmochiと古賀は直接文化祭で何があったのかを矢野に聞くこと
矢野が話したのは、
1.秋玻のことだけが好きなのか分からなくなった
2.キャラ作りを楽しんでいたことを霧香に気づかされてしまった(ここはボカしていますが)
ということ
まあ3巻序盤の時点で春珂のアタックにドキッとするようになったので1はしょうがないでしょう
ただ問題はやはり2で…
なんか嫌な予感するんですよね、また霧香が出てきそうな…
春珂が霧香に連絡を取ったのも今後出てきそうな伏線な気もしますし
霧香によって与えられたダメージは相当大きいと僕は思います
その夜、秋玻達はある作戦を決行することに決めて…!!
- 幸せになることをためらわなくてもいい
その作戦とは四季と秋玻、春珂が接触する時間を増やすこと
秋玻と春珂が実行しようとしてた作戦がようやく始まったとも捉えられますね
でもやっぱり四季の感情は動かない!!
ショック療法で復活しなかったんだからそうは上手くいかないって…
ただこのとき、秋玻がなにか我慢していることに気づいたのです
秋玻が以前父親と訪れた生駒山上遊園地に行きたがっていることに…
その遊園地とは実在する施設だそうですが、ただこの時の秋玻は明らかに別人
まるでキャラを演じて楽しんでいるかのよう
…これは霧香によって四季が取ってしまった行動を再現しているかのようにも見えますが…
ただそのときに思い出したのが父の言葉
「辛いことは際限なく積み上がることがあるし、逆に幸せだっていくらでも重なっていくんだ。つまりー幸せになることを、ためらわなくてもいいんだよ」
これ良い言葉ですよね…
世の中って良いことは続かない癖に悪いことは連鎖するじゃないですか
だから苦しむこともある
でも幸せになってはならない権利なんてない
幸せになることを恐れる必要はないのです
その上で四季はどうすればいいのか分からなくなるほど追い詰められてましたが、秋玻と四季が出した結論を「私を頼って欲しい」ということ
1巻の逆になってますね
思えば1巻では春珂を助けるために秋玻と接近して、紆余曲折あった末に秋玻と四季は恋仲になった
それから半年経過して、今度は秋玻と春珂が四季を救おうとしている
これって共依存とも捉えられませんが、秋玻と春珂なりの恩返しにも見えます
四季がいなければ春珂はこうして学生生活を楽しむことができなかったし、秋玻も孤独だったかもしれない
四季は間違ったことはやってない
伊津佳や修司、晃や時子、そして今回のOmochiや古暮と多くの仲間が心配してくれるようになったのだから
その上で物語はこの台詞で終わる
「ーわたしたち、ずっとこのままでもいられるかも!」
これはどういう意味かというと春珂が消滅を回避できる可能性が出てきたということ
確かに2人の入れ替わり時間は2人の信頼関係が関わっているはず
ということは2人が尊重しあえばこのままでも入れるってことでしょうか?
しかしながら最新の5巻から物語はいよいよ後半戦へ
モラトリアムの終わりも近付いてきました
そのうえ、この巻で遂に秋玻の本当の名前への断片が登場し、結末にも少しずつ近付きつつあります
春珂の消滅はやはり避けられないのか
悲しい結末にならないことを僕は望んでいます
1人の少女が3人の関係を大きく書き乱す…!! 〜「三角の距離は限りないゼロ 3」〜
タイトル:三角の距離は限りないゼロ 3
作者:岬 鷺宮
イラスト:Hiten
「三角の距離は限りないゼロ」の3巻
「ぼくたちのリメイク」3巻が怒濤の展開を起こしたようにこのシリーズも3巻で怒濤の展開が待ち受けます
- アピールしまくる春珂
伊津佳の前巻の行動を受けて「好き」という本心を隠しきれなくなった春珂
そこから交換日記も記憶を残すメモのやり取りが途絶えてしまったようなんですが、その反面、春珂は四季へのアピールが活発に
それは徐々にエスカレートになり、四季が警戒するほどまでに
秋玻はそれでも春珂のことを「邪険にしないであげて」と気遣うのですが、春珂は奪う気満々
恋を自覚した乙女は強いというべきか…
更にちょうどこの巻は文化祭の直前
という訳で当然クラスから実行委員を選ぶわけですが、伊津佳が挙げたのに続いて立候補したのは春珂
しかも春珂は四季を巻き添えに…
でもこの巻開始時点入れ替わり時間は45分まで減っている
それは春珂が消滅する日が刻々と近づいているという意味でもある
だから最後に思い出を幾つか作っておきたいんだと思います
なるべく今、最後って言葉は使いたくないけど…※筆者の状況についてはTwitterをご確認下さい
そんな四季達が通う宮前高校は文化祭を御殿山高校と共同開催
ただ、その御殿山高校には思いもよらない人物がいて…
- 不穏すぎる庄司霧香
その思いもよらない人物とは庄司霧香
かつて四季が通っていた塾の後輩です
ただ、この霧香
物語開始当初の幾つものキャラを使い分ける四季を生み出した張本人でして
「過去の四季」に戻そうとするため、秋玻が怒りを露にするほどです
そんな霧香ですが文化祭の実行委員としては有能
四季が苦戦した文化祭名物のイベントにブッキングを次から次へ進めていくのです
とはいえ霧香でも陰キャ的性質が強いOmochiのブッキングには苦戦
そこに秋玻が巻き込まれてしまうことに…
さらに時子や春珂も巻き込まれてしまいますが…
その上、霧香はある計画を着々と進めていたのです
その計画の真意を知ったときは「ああ…」ってなったけど、このやり方はな…
- そして四季は…
その霧香の計画とは文化祭当日に発動
文化祭の看板であるイベントをパンフレットに記載しないというミスが当日に発覚
これを受けて、四季は過去の自分を一時的に出すのですがこれこそが霧香の狙いです
このミスは霧香が意図的に仕込んだもの
霧香の罠に四季はまんまと踊らされていたということです
四季の咄嗟の行動もあってなんとか最悪の事態は回避成功
ですがこの成功は逆に四季を追い詰めてしまうのです
「これから自分はどうすればいいのか」と
そして最後の1ページ
遂に不安は現実となってしまう…
このシリーズに興味を持ったのは去年くらいだったかな?
その時点で4巻のあらすじが読めたのでこの巻が「何か」を起こすことは読めてました
ただ、ここまでの急展開を迎えるとは思ってもいませんでした
まさに起承転結の「転」というべきエピソードでした
物語は5巻から後半戦
ということは次が前半の起承転結でしょう
この巻の感想掲載後、無事体調も回復してシリーズ最新刊にあたる5巻、そして「日和ちゃんのお願いは絶対」を読める日が来ることを願っています
ちなみに、文化祭で百瀬と柊ところは途中失恋相談コーナーを行ってたりする
完璧「失恋探偵ももせ」だろ(笑)
恋と本心 〜「三角の距離は限りないゼロ 2」感想〜
タイトル:三角の距離は限りないゼロ 2
作者:岬 鷺宮
イラスト:Hiten
「三角の距離は限りないゼロ」の2巻
「失恋探偵ももせ」や「読者と主人公のこれから」と世界観を共有しているのであの2人もこの巻から本格的に登場しますが、あの2作とはテイストが大きく異なるようで…
- いきなりの爆弾発言
前巻で秋玻に告白した四季ですが、前巻終了時点ではまだ返事をもらってなかったのでその返答から始まるのがこの巻
結論からいうとこの2人は付き合うことになります
並びに四季はキャラを作るのをやめ、秋玻も二重人格であることを修司や伊津佳の前で告白したこともあって彼らを取り巻く環境も少し変わった様子です
ただこの巻は序盤からぶっ飛ぶような展開になります
伊津佳に誘われて、四季や秋玻はラーメンをご馳走になるのですがそこでいきなり伊津佳は修司にコクられたことを告げるのです(笑)
「読者と主人公のこれから」を読まれた方ならご存知でしょうがこの2人は10年近くの付き合い
普通に考えればどっちかが意識するようになってもおかしくないはずです(恋愛ゲームでは定番の設定ですね)
でもいきなり告白されたら誰だって困惑するのは当たり前
幼馴染みから関係が変わるかもしれない
そう意識すると戸惑うのは無理もありません
だから伊津佳は四季や秋玻に相談を持ちかけたのでしょう
この時点で伊津佳は告白の返事を保留中
四季や秋玻は2人がベストな解答を出すことを望んでいるという状態です
それは後悔する選択をしてほしくないという2人の配慮だと思われます
なお修司は自信なさげです
ただ、この頃から春珂は少し悩むようになっていて…
- 恋をするのは本当に素敵なのか?
それから数日後、四季はある行動に出ます
その目的とは、
1.春珂の友達を作る
2.伊津佳と修司が普通に話せる関係に戻す
この2つを実行するために「伊津佳や修司以外の人物と遊ぶこと」を秋玻や春珂に提案していたのです
で、ここで満を持して細野晃と柊時子が登場
お察しの通り「読者と主人公のこれから」の主要人物2人です(忘れているかたもいらっしゃるでしょうが、晃は伊津佳と修司の幼馴染み。時子は晃の恋人です)
ただ、晃は元々読書以外はあまり興味ない性格なのでやっぱり人付き合いは苦手な様子
四季も「苦手」と称してます
秋玻と時子は相性は悪くない感じですが
なお、四季と秋玻は「十四歳」を読んでいるので2人の事情は把握済みでしょう(笑)
一応、細野の自宅でレースゲームをした際に春珂と時子は親密になり、伊津佳と修司の関係も元に戻りかけるのですが、結論はやはりそう簡単に出せない
付き合いが長ければ長いほど結論を出すのが難しくなってしまうんでしょうね…※僕にはそんな経験一切ない
ただ、そんな状況を他人が待ってくれる訳もない
伊津佳が回答に悩んでいるなかで同じクラスの古暮千景が修司に告白したのです
この時、修司は「告白した相手(それが志津佳であることは伏せてます)がいる」ことを理由に断るのですが、古暮は諦めない様子
その日の放課後にもう一度告白をするのですが、その時伊津佳の悪口を言ってしまったことが修司の静かな怒りに触れてしまうことに…
ちなみにこの時、四季と春珂はその様子を近くで盗み聞きしているんですが、しれっと春珂は録音してます(笑)
春珂なりの伊津佳への思いやりだと思いますが、皆さんは絶対やらないように
人間関係崩れる可能性ありますよ…
そんななか、伊津佳の返答期限である日曜日に四季は秋玻とデート中
もともとこのデートは秋玻が見たい映画があると誘ったものなんですが、映画の上映時間が2時間という事で秋玻は全てを見れるわけではない
しかも上映開始時間も22時とかなり遅いんですが…(高校生ってレイトショー見れましたっけ?)
ただこのデートにはもう1つの目的もあって…
ここでの秋玻の行動には誰もがビビると思います
でもそうなっちゃうのも理由があるんです
春珂の悩みが徐々に顕現しているから…
「恋したい」という悩みが…
だから秋玻は怖いんですよ
春珂に四季が取られないか…
秋玻はクールに見えて弱いですからね…
その上でとてつもない行動にも
「恋はー無条件にいいものなんかじゃ、ない」
この台詞は非常に重くのしかかってるくるでしょう
そして修司はというと…振られてしまいます…
- 本心
修司が伊津佳に振られてしまったことで修司と伊津佳の関係はぎくしゃく
4人で過ごしていた昼休みの風景も変わってしまう…
勿論昔みたいに4人で仲良くしたい四季ですがそう簡単に解決策は浮かぶわけありません
まあ、告白って大勝負みたいなものであって失敗したら関係悪化しちゃうもんな…
そんな四季に助言をしたのはまたも百瀬
たまたま休日に書店で出会い、そのまま食事をすることになりますが百瀬のあの髪の毛をもさもさと掻き回す癖は健在です(笑)
確かこれ、九十九に髪を治して欲しいことから生まれた癖ですよね?
まだ治ってなかったのか(笑)
なお百瀬は九十九と遂に結婚しました(笑)
その百瀬が四季に差し出したのは「十五歳ーSide A」
「読書と主人公のこれから」の終盤に出版された「十五歳」のスピンオフもとい、晃の物語です(笑)
故にここからの展開はある意味「読書と主人公のこれから」へのアンサーに近いです
晃が終盤にとった行動は以前にも書いたので省きましたが、その時の行動って「柊に会いたい」という晃の本心で動いたもの
つまり「本心を隠しては駄目」と百瀬は伝えたかったのでしょう
なお、これをきっかけに四季と晃は若干関係が良好になりますが、この寸前に時子は大笑いします(笑)
ここまで早くコミカライズ追い付いて!!※残念ながら晃と時子の挿し絵はありません…
その上で後日、伊津佳からようやく本心を引き出しますがその本心が切ない…
どうやったって修司を好きになることができないというのもありますが、
「みんなが見るわたしも、本当の私だもん」
伊津佳は本来の自分も周囲から見られる自分も大切にしたかった
四季とは逆なんですね
幾つものキャラを作っていたことに罪悪感を覚えていた四季に対し、伊津佳は両方の自分を守りたかった…
そりゃ苦悩するよ…
2つを同時に守ろうとするなんて簡単なことじゃないから…
伊津佳の苦しみは同情してしまうし、早くここを動く媒体で見たいと思ってしまう
多分次の巻からはまた一回り成長した伊津佳が見れると思いますが、伊津佳をみんな慰めてあげてください…
ただこの伊津佳の行動は春珂にも影響をもたらし!?
正直、この巻読んで僕は驚きました
ライトノベルらしからぬギリギリの描写が出てきたので…
二重人格の設定があるのでファンタジーではあるんですが、かなり現実に近い描写を入れてくるとは思いもしませんでした
「日常+ファンタジー」の代表格である「ココロコネクト」や「青春ブタ野郎」シリーズはシリアステイストは強いですが、この作品もどんどんシリアスな方向へ突き進みそうです
そういえば「ぼくたちのリメイク」も3巻が分岐点になって4巻がご存知の通り「本当にライトノベルか…?」と思うほどどシリアスになりましたが、まさかこのシリーズも…!?
遂にあの謎が明らかに… 〜「僕が僕であるために (6)」感想〜
タイトル:「僕が僕であるために。(6)」
作者:葉月抹茶
「僕が僕であるために」6巻
この巻で大きな謎の1つが紐解かれます
- 千尋の本心
前巻で駿が紗奈と楽しそうに話している光景を目撃してしまった千尋は動揺
1日明けてもその動揺は収まらず公園のベンチに座っていたところ、康平に遭遇
康平のバイト先に移動することになりますが休憩中、千尋は耕平に「駿くんが好きだ」ということを明かします
でもその本当の本心は
「駿くんと話してみたい、ただそれだけ…」
昔から駿のことは好きだった
けど恥ずかしがり屋だから話せなかった
だから今度は話してみたい…
切ない、切なすぎる…
気持ちは報われなくてもいいから話したい…
好きな人がいたのに話せなかった方々の心中はきっとこんな感じなんでしょう
たまに「再会したら両思いでした!!」みたいな話見るけど、そんな現実甘くない
むしろ引っ越してしまったら二度と会えないことだってあるんだから
ただ切ない、切なすぎる…
- 揺れる3人の関係
この巻では駿と歩、紗奈からなる3人の関係にも大きく変化の兆しが
駿が紗奈と2人で喫茶店にいった際に駿が取った仕草に紗奈がデジャブを覚えたり、紗奈が歩、駿と共に康平の職場(この巻はやたら康平が登場する(笑))で勉強会をしている最中、歩に「好きな人はいるの?」と聞いたり
遂にこの3人の関係に変化が起こりそうな予感がします(紗奈は歩が好きなのかな?)
更に駿は「歩に入れ替われば…」と考えてしまったことで自己嫌悪に陥ってしまったり…
最終的になんとか立ち直ることが出来ましたが、気になったのは「文化祭」
駿のモノローグが過去形になっているのが気になる
何が起こるんだ…?
- 優と歩の間の秘密
そしてこの巻、最大の見所は優と歩の間の秘密
まず以前も触れた歩のネクタイピン
これは優の姉である遥からもらったもの
優が駿と歩が入れ替わっていることを即座に見抜いた理由はこれです
次に優は歩を嫌ってはないこと
嫌っているように装っているのは歩を遥への依存から解き放つため
一見大人びている歩は今なお遥から卒業できてない
実は大人びているのは優の方だったのです
つまり優と歩は実際仲良くて、歩もその意思は分かっているんでしょう
これは驚きました
まさか歩の方が冷静じゃなかったなんて…
しかも後日、歩という人物は遥に影響されて形成されたということを歩から聞く駿
だからこれからも変われない…
なんて悲しいんだ…
その上で駿は歩に自分の行動を見て欲しいと頼むのですが…
問題は次の巻
1巻で予言されていたあの瞬間がとうとう訪れるということ
残すは2巻…
覚悟を決めて読みましょう
不思議な不思議な三角関係の物語 〜「三角の距離は限りないゼロ」感想〜
タイトル:三角の距離は限りないゼロ
作者:岬 鷺宮
イラスト:Hiten
電撃文庫の次なるメディアミックス候補作品は間違いなくこれ
最新刊が発売されたばかりの「三角の距離は限りないゼロ」です
度々話してましたが「失恋探偵ももせ」から百瀬、「読者と主人公のこれから」の修司や伊津佳も登場
晃もちらっと出てきますよ
- 幾つものキャラを使い分ける少年と二重人格の少女
この作品の主人公、矢野四季はいくつものキャラを使い分けている少年
そのキャラとはここで説明するよりもコミカライズの1話(コミックウォーカーで無料公開中)を見ていただけた方が分かりやすいので省きますが、いくつものキャラを演じるというのは本当の自分を隠すということ
つまり周囲に見せているのは偽りの姿ということです
こうしたキャラを使い分ける人間は特に珍しく有りませんが、その使い分けはだいたい仕事とプライベート
僕も本来人見知りな人間ですが、仕事になるとスイッチを入れて別の人間になっている(周囲には包み隠さず明かしています)ように、大体キャラは2つ、要は表と裏です
でも四季はその名前の通り本来の性格と序盤で演じた3つのキャラを合わせて合計4人のキャラを演じきってる
そうなると当然罪悪感が沸いてくるわけで…※ちなみに志津佳は序盤から登場、そもそもこの作品「読者と主人公のこれから」とリンクしていて、修司も含めこの3人は同じクラスでした
そんな彼が一目惚れしたのは同じ高校に転校してきた水瀬秋玻
ただ彼女にも秘密がありました
秋玻は定期的に春珂と入れ替わってしまう二重人格だったからです
本来の人格(と思われる)のは秋玻であり、春珂は秋玻のストレスから生まれたもう1つの人格
すなわち、姉妹で例えるなら秋玻が姉で春珂は妹のような存在なんですが、学校内で二重人格を知る方はほとんどいない
そのためバレないように学生生活を送ろうとしたんですが即効でばれてしまったのです…(学校では秋玻で通学しており、春珂の存在は秘密)
しかも記憶は別々な上に性格や趣味も正反対なので苦労するのは必然(彼女の部屋は1つの部屋を姉妹で共有しているようなものなので混沌しています)
それは2つのキャラを使い分けているかのようなもの
そんな水瀬に重なるものを感じた四季は彼女たちに協力するようになっていきます…
この流れは「読者と主人公のこれから」と似ていると感じる方がいらっしゃるかもしれませんが、あちらは説明書のようなものがあったのに対し、こちらは一定時間で人格が入れ替わる
しかも記憶は共有されないので時子よりも苦労します(汗)
それでも交換日記をしたり趣味について共有することによって日々を送っていくのです
- 物語は台場から動き出す
そんな3人の関係に大きな変化をもたらすのは台場
秋玻を四季が好きだと知った伊津佳が「恋のキューピット大作戦!」という名目で四季と秋玻を近づけようとしたのが発端(同時に伊津佳は四季、秋玻、修司の4人で遊びたいんだとも思います)
四季としても春珂に「違う環境に挑戦させる良い機会」と考えていたのですが、春珂が賛成したのに対して秋玻は拒否
しかし最終的には参加することになります
で前半は秋玻がショッピングを、後半では春珂がアミューズメントを楽しむのですがこの日の秋玻は調子が悪い…
それは秋玻と春珂が喧嘩したのが原因だと後に分かるのですが…
アミューズメントを楽しんだあと、四季と春珂は観覧車を楽しむのですが、そこで四季はは今のように幾つものキャラを演じるようになってしまったきっかけを春珂に聞かれ話すことに
それは中学時代に人間同士がレッテル貼りを行いその上で「◯◯はこうすべきでこうすべきではない」という風潮に違和感を持ち、それを指摘したところ、クラスから浮くようになってしまったとのこと
その後、高校で幾つものキャラを演じるようになった結果、楽しめるようになったからこのようになったということですが、こうした光景は現実でもあるんでしょうね
階級社会ではありませんが、空気読めない人物は自然に隔離されていく風潮
ぶっちゃけ僕もそうでした
小学校の同窓会とか昔行きましたが僕だけほぼ避けられてましたし
波長が合わないとこういう風にされてしまう…
こうした経緯があるから四季は春珂を支援するようになったとのこと
ただこの後、春珂が「秋玻のためにやれること」として四季にキスを提案するのですがこれが思わぬ事態を…!!
- 避けられない運命を知ったとしても
その翌日から四季は違和感を感じるようになります
本来、春珂が出る時間に秋玻が出るようになっていたからです
最初こそ誤魔化しきれていたものの現代文の授業中に入れ替わりが発生してしまい…(ちなみに現代文の講師は百瀬、学生時代少女漫画を好んでいた彼女が現代文の講師をやっているのは間違いなく九十九の影響でしょう)
というのは秋玻と春珂が入れ替わる時間は秋玻のストレスが解消されたことで自然と短くなる運命にあった
要するに入れ替わり時間が0になったとき、春珂が消えることを意味するのです
しかもそこに深く関わっているのはお互いがお互いを尊重できるか
つまり秋玻が春珂を否定すればするほどに時間は短くなってしまう…
それは秋玻も春珂もお互いに支え会うことで水瀬という人間が成り立ち、逆に傷つけあったりすると一気に崩れてしまう…
多分これで多くの方が察すると思いますが、秋玻の方が本当は弱いんです
そもそも四季が水瀬を手伝い始めたのは春珂をサポートするためでしたよね?
ということは秋玻は自然とストレスを溜め込んでいく
「春珂は助けてくれるのに…どうして私は助けてくれないの!?」
といった感じで…
終盤、そもそも水瀬が転校してきた理由はリハビリの一環
これは百瀬が四季にだけ明かしたものです(というか水瀬の秘密は一部教員は知ってました)
ただ同時に救えるのは四季だけと明かしたのはいかにも百瀬らしいというか…
その後押しもあって、四季は秋玻の本音を引き出しようやく告白したのです(この巻の時点では回答保留になってるけど)
でもこれってただの告白だけじゃない
「秋玻を助けたい」
という四季の本音も導きだしたのだと考えています
その上で、四季も決断します
あの罪悪感から解放されるために…
一応僕はコミックウォーカーに掲載されているコミカライズも読んでたりするので大まかな流れは把握してました
ただ、原作1巻には2ページの短いプロローグがあり、そこには四季が書いたと思われる手紙の断片が載ってます
恐らくこれは春珂が消滅する運命は避けられないことを示唆していると思われます
その上で××へと名前は伏せられている
これが水瀬の本当の名前なんでしょう
5巻の試し読みを見たところ、挿し絵に「××ちゃんみたいね」という台詞があったので後半のキーワードになりそうな予感
並びに最新5巻のあらすじでは「モラトリアム(心理学的観点では猶予期間を現す)の終わり」が近づいていることを示唆しています
作者の岬先生は以前Twitterで「5巻から後半が始まる」とツイートしてました
執筆したのはまだ5巻が刊行される前ですので、何が起こるかは僕にも分かりません
青ブタの大ヒットで次なる「日常+ファンタジー」作品として注目されている本作
今ならまだ間に合います
ちなみに…最終的に四季は水瀬にキスされますが、このキスを行ったのは秋春か春珂
それはこの時点では僕にも分からない…
それぞれの想いがぶつかり、それぞれの道へ行く 〜「ぼくたちのリメイク7」感想〜
タイトル:ぼくたちのリメイク7
作者:木緒なち
イラスト:えれっと
ぼくたちのリメイク7巻、3巻同様ここで一区切りといったところでしょうか
※この巻も視点移動が多いです
- それぞれのバックグラウンド〜九路田編〜
この巻はチームきたやまとチーム九路田の動画対決の行方が中心
ですがその顛末に向かうにまで2人の人物のバックグラウンドが
まずは九路田
5巻の感想で「こういう性格になってしまった背景があるのではないか?」と僕は記していたと思いますが、メディアミックスに失望してあの性格になった冴えカノの紅坂朱音とは180度違ったようで…
というのは九路田の父、九路田祥一は有名なプロデューサー
「手堅く話題を作れるプロデューサー」と九路田は称してますが、やり方が映画ファンからするとひんしゅくを買うもの
吹き替えに芸能人や芸人、プロモーションに映画と関係ない有名人を使うって今の映画産業そのものじゃないですか…(ああ、テラフォーマーズ…)
でも彼は決して父を嫌っているわけではない
彼は中学時代から「本当にいい物は、ちょっと目立つ、目を引く程度のくだらないものを一蹴できる」という信念で行動してきたのです
だから本気で取り組むことが出来る人間ともの作りしたかっただけなんです
最初は要注意人物だと思っていましたが、根本は凄い情熱的な人間だったのです
誤解してすいませんでした
だから彼からすると恭也みたいな人間を待ち望んでいたのでしょう
本気でぶつかり合えるライバルを
- それぞれのバックグラウンド〜シノアキ編〜
もう1人はシノアキ
あの九路田ですら彼女を恐れているようなのですが、シノアキが絵を描き始めたバックボーンが遂に明かされます
シノアキが絵を描く理由、それは母と会話したかったから
シノアキの4人家族だったようで既に母親は他界
母親から強く影響を受けているとのことですが、その母親が絵を描くのが上手だったとのこと
他界したあとに母親と繋がり続けたくて絵を描いていたのです
となると3巻の恭也の選択は無意識にシノアキにダメージを与えていたことになります
アイデアを否定される=母親との会話を否定されるということ
4巻でシノアキが描くことを辞めた理由はそれもあったのかもしれない…
もちろん目標にするものがなくなっていたというのもありますが…
その上でシノアキにとっても恭也との出会いは大きかった
恭也を始め、チームきたやまや九路田組へ参加できたというのはシノアキが求められていたという証拠
シノアキにとって絵を描くのは大切なものになっていたのです
ただただ絵を描くことが好きな純粋無垢な少女
この大切なものが奪われる展開が来なければ良いんだけど…
- 大衆vs非大衆
そしてこの巻の目玉と言えるのは賑やかな文化祭のなかで行われるチームきたやまと九路組の動画対決
正直、口頭で説明するのがあまりに難しすぎるので皆さんの目で読んでいただきたい(というかアニメはここまでやってくれ、コミカライズもそこまで到達できるか分からない)のですが、一言で言うなら大衆VS非大衆
「共感」を味方に付けるか、「圧倒」するか
ニコニコ動画を舞台に繰り広げられる対決は手に汗握るものがあります…!!
そして戦いが終わると、それぞれ次なる道へ
- シノアキ→プロデビュー
- ナナコ→コラボの声が届くように
- 貫之→新人賞受賞
九路田や斎川、河瀬川も次なるステージへ向かおうとするなか、恭也は…
という訳で次の巻からはいよいよ3回生編に突入するわけですが、個人的に気になったのは2つ
①サクシードソフトの登場
そのうち本編に絡むと思ってましたが、やっぱり絡んできた!!
しかも例の危険人物の名前まで…
恭也達、いろんな意味で注目されています
次の巻から本格的に絡んできそうだけど一番危ないのはシノアキかな…
九路田もシノアキの今後を心配してたし…
恭也、絶対にシノアキを守れ!!
②恭也の今後
そしてもう1つは恭也が今後どうするのか
シノアキやナナコ、貫之が次のステップへ進むなかで恭也はまだやりたいことを見つけられていません
次の巻がここに焦点が当たりそうだけど、僕の予想ではプロデューサーになるんじゃないかな
これまでの作品も思えば恭也が立案してきた だったらその発案力を活かせば良いんですよ
アイデアを提案する才能が恭也にはあるんだから…
次巻、第3部突入
今度は何が待ち受けるのか…!?
…しかし次の巻はまさかのスピンオフです…
またあの重苦しい世界を味わうのか※6月刊行予定
もしも自分の愛読書と同じ名前の人物が現実に現れたら… 〜「読者と主人公と二人のこれから」〜
タイトル:読者と主人公と二人のこれから
作者:岬 鷺宮
イラスト:Hiten
「三角の距離は限りないゼロ」に繋がる作品巡りは恐らくこれがラスト
この作品は2017年に出版された作品で僕も当時購入を検討していた書籍です
この1年後に「三角の距離は〜」が出版されるのですが、その「最初の距離は〜」に登場する広尾修司と須藤伊津佳はこの作品が初登場となります
- 目の前に現れたのは好きな作品の主人公!?
主人公の細野晃(以下晃)は読書が好きな高校生ですが、読書以外は興味なし
特に「十四歳」という本を好み、その作品に登場するトキコに魅せられ、「十四歳」とトキコさえいればいい
…そんな男子高校生だったんですが、その状況が一変するのは新学期恒例の自己紹介でトキコと同じ名前の柊時子(以下時子)が現れたから
おまけに趣味や性格まで似ているという…
それもそのはず
時子こそ、トキコの元になった人物
「十四歳」の作者である柊ところは時子の姉だからです
しかし、これ裏を返せば晃には時子の個人情報はある意味筒抜けということ
例えるなら美少女ゲームのキャラが現実に現れているような状態
冷静に考えてみればこんなに恐ろしいことはないですよ
人と人というのは交流を重ねてお互いを知っていくもの
それなのにまだ数日しか会ってない同級生にほぼ全てを知られているのは恐怖そのものじゃないですか(汗)
実際時子は「十四歳」の内容を晃に熱く語られるとき赤面しています
幸い、「十四歳」を知っているのは晃だけ
他の方には教えないでと頼むのは当然です
スマホを落とすようなもんだからな…
その上で時子は「手助けして欲しい」とも頼む
勿論これを晃は拒みません
自分の好きなキャラのモデルに会えた上に、時子を助けるということは自分も物語の登場人物になっているようなもの
こんな機会を手放す方はいないでしょう
こうして晃は時子の手助けをするようになります
ちなみに僕が好きな作品のキャラに会えるなら真っ先にガルパンのドゥーチェに会いたい
毎日楽しくなりそうだから※無視してください
- 時子とトキコ
ということで時子を手助けすることになった晃ですがお互い物静かということもあって、クラスに少しずつ馴染んでいくことは至難の技
ただ、その2人を手助けする存在となるのが広尾修司(以下修司)と須藤伊津佳(以下伊津佳)
「三角の距離は〜」読者からすればお馴染みの2人です(ただし、この2人は晃の幼馴染みであってクラスは一緒ではありません)
その2人が晃や時子をカラオケに連れていったり、ラインのIDを交換したり時子の家で勉強会をしていくことによって少しずつ時子は変化していきます
その勉強会で時子は修司や伊津佳と自身が抱えてるコンプレックス(修司の父はIT会社の社長で伊津佳の姉はモデル)を共有する一方、晃には姉である柊ところと晃を対面させたりとそれぞれ交流を深めていくのです
なおこの時、ところは晃を次回作に登場させたいとオファーしてたりもする
自分の憧れの作家と対面できて、次回作に登場させたいなんて言われたら幸せ以外何者でない!!
更に晃と時子は2人で喫茶店に行くなど関係も良好になり晃は時子を好きになっていくのですが、ただ晃の中にも妙な違和感が
その原因は時子とトキコが徐々に乖離していること
普通に考えれば登場人物が変化していくことは嬉しいこと
しかしながらこの作品の場合、それは晃がトキコに置いていかれること、並びに自分のイメージするトキコが変化してしまうことを意味します
故にあるとき、晃は時子と別れてしまうのです…
- 人と付き合うとは?
その別れをきっかけに時子どころか修司や伊津佳ととも距離を取ってしまう晃
その状況を変えたのがところ
ところと会食した後、メールで送られてきた時子をモデルにした新作小説の下書きを読むことで晃は時子の気持ちを知ったからです
ただ、晃には悩みがありました
というのは晃はなかなか空気を読むことができず小学校時代、芦屋という女子だけど見た目も性格も男っぽい、いわばボーイッシュな同級生がいたのですがその娘を「お前もう男子だよなー」と言って傷つけてしまった過去があったのです(作中では晃が時子の自宅を訪れた際の帰り道に時子だけに明かしています)
そのため、修司や伊津佳に相談しに行くのですが、その時に「人と付き合うこと」に教えられるのです
そもそも人と付き合うこと事態、難しいこと
僕だってとっさの言動で相手を傷付けたりしてしまうこともある
お互いの感情が分からないゆえにすれ違いやすい生き物なんですよ
そのうえ、傷つけてしまったと思っていた芦屋も数ヶ月後には笑うようになっていたようで…
傷付けたり傷つけ合わなかったりするのが人間です
修司や伊津佳の助言で立ち直った晃はその後、時子を呼び出します
勿論晃が時子に告げたのは…!!
あとがきによるとこの作品はあの「失恋探偵ももせ」の前に作られたものとのこと
ただ、制作当時のものから少しアレンジしたものがこの作品ということです
ちなみに九十九はちょろっと出てきてたりする(笑)
実は晃と時子も「三角の距離は〜」に出てくる上である巻で重要な役割を果たすとのこと
「三角の距離は〜」といえば本日最新5巻が刊行されましたがそろそろ、アニメ企画動いてもおかしくないような…
アニメになったら百瀬や九十九、晃や時子も動くんですよね?
見たいな〜