「優雅な歌声が最高の復讐である」を読んで感じたこと
新年を迎えると日本では必ずと言っていいほど行われるものがある
BOOKOFFの割引セールだ
書籍を購入するべくよくBOOKOFFに訪れるのだが、今年はとくに書籍を買っていた
正直タイトルすら見たことがない作品もある
だけど絵が良いと思わず買ってしまうのだ
その中で自分はこれを読んでいた↓
繰り返すがタイトルは全く知らなかった
それどころかあらすじすら読まずに買った
名作か迷作は読むまで分からない
確かめられるのは自分のみ
という訳で読んでみる
物語はかつては将来を有望視されながらも怪我によって、サッカーへの情熱を失ってしまった少年隼人と日本に帰って来た世界的に活躍する歌姫RUKOの顔を持つ少女璢子を中心に描かれている
大きな特徴としてこの2人以外の挿絵は一切登場しない
だから作中に出てくるクラスメイトや彼らの両親や関係者のイメージ絵すらないのだ
こういった作品はなかなかない(前代未聞と書かないのはこういった手法を取っている作品は他にもあるだろうから)
そもそもライトノベルって僕は小説に挿絵を加えたり、ページ数を少なくすることによって入口を広げたものと考えている
しかしこのラノベは挿絵も限られているし、「第何章…」といった区切りもない(一応この作風はSAOで知られる川原先生も「絶対ナル孤独者」で取り入れている。感想を執筆することも検討しているが、かなり読みにくい構成だ。終盤になるとモヤモヤは晴れるけど)
場面転換はあるとはいえ、もはやラノベというより小説だ
この作品のテーマは2つある
1つは「人生が劇的に変わる瞬間はある」ということ
まず隼人は怪我によってかつてのようなパフォーマンスを出来なくなってしまい、急激にサッカーへの情熱が失い、サッカーをやらなくなってしまった
かつての実積を知るものは「サッカーをしている姿」を見たいのだが、本人はそれを拒否
だが璢子との交流によって少しずつまたサッカーをやるようになる
そして璢子とサッカーの試合を見るべくサッカー場に足を運んだとき、咄嗟にフットサルのゲームに参加しシュートを決める
「サッカーを嫌いになっていた」ようで本当は「サッカーをやりたかったのだ」
この作品には実名のミュージシャンやサッカーチームも登場したりする
音楽で言えばMy Bloody Valentineにサカナクション、ONE OK ROCK…
サッカーではレアルマドリードをはじめ様々なサッカー用語が飛び交う
故に双方の知識がないと混乱したりするのだが、作中にはOasisがまだ売れてない頃に「I'm a Rockstar」と名乗るシーンが登場する
それがOasisを変える瞬間だったのだが、彼にとってサッカー場に足を運ぶことが彼を変える瞬間だったのだ
※ちなみにMy Bloody Valentineは「You Made Me Realize」を聞くことをおすすめする、何故かサブスクから消えたけど
それをきっかけにまた彼はサッカーを始める
人生が劇的に変わる瞬間はある
作者はそれを伝えたかったのだろう
※そういえば忘れらんねえよの柴田も深夜にYouTubeでチャットモンチーを聞いて、涙を流し本当にやりたいことに気付いた、彼にとっての「人生が劇的に変わる瞬間」はそれだったのだろう
もう1つのテーマ
それは「自分が本当にやりたいことをやれ」ということ
璢子は世界的に活躍する歌姫RUKOということもあって彼女の歌声を聞きたいというものが続出するのだが、彼女はカラオケを含め断る
一度は口パクの疑いをかけられるが、クラスメイトの前で歌声を披露してそれを否定することに成功する
しかし歌わない本当の理由は高音が出なくなってしまったから
その主な原因はストレス
そのストレスというのは自分が歌いたい歌を歌わせてもらえないから
この時思い浮かべたのはかつて日本テレビで放送していた「ザ・クイズショウ」
簡単に言えば、嵐の櫻井翔演じる司会者がクイズ番組を通じて回答者の真の姿を見せるという作品
クイズショウが裁きを下す感じだった
その2話で人気女性ケータイ小説作家が登場するんだけど、その作品とは本人が書いたものではなく、事務所の社長が書いたものを書かされたもの
クイズショウには最後の問題を正解できたら夢を叶えるというものがあって、そのクイズに正解できた女性は自分が書きたい作品をようやく書けるようになった
それと同じで歌いたくもないラブソングを歌わされていた
本当は別のことを歌いたかったのに
終盤、彼女は新しいRUKOの姿を見せるためにお祭りに参加し全曲新曲で新しい彼女をファンに見せる
高音が歌えないことを隠すためにアンコールはなし
しかしアンコールを求める声が多く、アンコールをやることになってしまい高音が歌えなくなっていることがバレてしまうとやはり非難が
それでも隼人が歌ったのを機に次第に合唱が起こり、最終的には自身の状況を告白
インディーズとして再出発することを決めるのである
この瞬間はまさに解放だった
「本当にやりたいことをする」ための
※解放と言えば「天気の子」もそうだった、あれは「大人からの解放」がテーマみたい
「天気の子」については→「天気の子」を見てきました※簡単な感想です - Anime,comic,Light novel...
これは「人生が劇的に変わる瞬間」と「本当にやりたいことをするため」の物語だ
音楽用語やサッカー用語が多いので分からないと読むのに苦労すると思う
でもどちらが好きなら読んで損することはない
個人的には好きだ
ただ、登場人物が多いゆえにメディアミックスして整理しやすくして欲しいのが本音
昔、「下ネタ〜」の作者が書いた「二度目の夏〜」が以前映画になったから可能性は0ではなさそう
電撃文庫がこのブログ見つけたら動いてくれないかな…
これは絶対メディアミックスするべきだって!!
ちなみにこの作品、なんと後書きもない
だから何故この作品を書いたのか、意図も分からないのだ
今現在、作者である樹戸先生の新作は2年近く発表されてない
発表されたら手にとって読みたい所存である