猛プッシュも頷ける注目作品 〜「声優ラジオのウラオモテ」感想〜
タイトル:声優ラジオのウラオモテ
作者:二月 公
イラスト:さばみぞれ
ラノベファンなら名前は見かけたことがあるでしょう
第26回電撃小説大賞受賞作である「声優ラジオのウラオモテ」
まだ1巻しか刊行されてないにもかかわらず、早くもコミカライズ開始、ラジオ番組ともタイアップ…
電撃文庫の新人作品がここまで猛プッシュされるのは異例の事態です
ただ、この作品読めばプッシュされる理由も頷ける面白さです
- 正反対の学生声優がラジオ番組!?
この作品のコンセプト、それは「仲の悪い声優同士がラジオ番組をしたらどうなるか」
主人公である佐藤由美子と渡辺千佳は共に同じ学校に現役高校生声優(ストーリー開始時点では接点はなし)
しかし共に性格は正反対!!
歌種やすみとして活動する由美子は典型的なギャルであるのに対し、夕暮夕陽はクラスに1人か2人いるようなぼっちで毒舌
ただ声優としての立場は正反対で由美子は3年目の新人声優(というか声優業界では3年目も新人に入るのね…。野球の新人王も5年目まで対象だからそれに近いのかな?)であるのに対し、千佳は人気急上昇中の若手声優
ものの見事に正反対です
そんな2人がラジオ番組で共演することになったきっかけは同じ高校に通っていたから
ただギャルと根暗は住む世界が全く違います
なので相性最悪…
それでもなんとかラジオ番組を成り立たせるのはプロとしての執念を感じます
で、そのラジオは幕間で雰囲気だけは味わうことができるのですが、コミカライズだとどんな感じになるんだろう…?
漫画はもう始まってるので単行本が刊行され次第チェックする予定です
- 共に過ごすことで見えてくるもの
ラジオ番組はなんとか成立するも2人の仲は全く変化なし
放送作家で由美子と交流がある朝加美玲はなんとか2人の関係を良好なものに持っていこうとするが、ことあるごとに対立しまう2人
そんな簡単に仲良くなる訳がありません(漫画やラノベの鉄則 例:「とらドラ」、「緋弾のアリア」)
それでもラジオ番組の公開収録や新作アニメのイベントで由美子の先輩である桜並木乙女がライブに参加できなくなったアクシデントを2人でフォローしあったりとなんやかんやで連携は上手かったりします
ミュージシャンやアイドルの方々も実際はこんな風だったりするのかな?
その中でも印象的だったのはお泊まり会
2人のラジオに先輩である乙女がゲストとして出演
その際に乙女が「お泊まり会とか楽しいよね〜」と言及してしまったため、成り行きとはいえ由美子と千佳は千佳の自宅でお泊まり会をすることに
その際2人で料理したり、一緒に入浴したりとお泊まり会らしいことをするのですが、このお泊まり会で千佳は本音を漏らす
彼女が声優になったきっかけは、アニメーターとして活動する父の作品に出たかったから
加えて母親は未だに声優として活動することに反対していることも
作中序盤からアイドル声優として活動することに千佳は嫌気を差していたのですが、声優になった理由を聞くと納得が行きます
本当は父の作品に出演したくて声優になったのに、アイドル声優として見られていることが多い
やりたいことが出来ない状況に苦しんでいるというわけです
それでも最近は楽しくなってきたとのことですが、それは由美子と共に活動することが多くなって認識が変わってきたんでしょう
その上で少しウトウトした後、由美子は千佳の母親と対面
彼女に声優業界の実像を聞かれた上でそんなに甘い場所ではないと認めた上で千佳のことを擁護
こうするようになったのは無意識に千佳をライバルとして認識にするようになったからでしょう
翌日、千佳から由美子に嫉妬していると言われたことでお互いライバル視してると認識するようになりますが
まあなんなかんやで上手くいってる2人
ただこの2人が番組の収録後に喧嘩した後、思わぬ事件が発生し…
- 暴徒化するファンの恐ろしさ
その事件こそ、この作品では目を反らしてはいけないもの
それは暴徒化するファンのこと
これは声優に限らずだけどミュージシャンやスポーツ選手に対して我々はクリーンなイメージを抱いてる
勿論メディアに出る姿は仮の姿であることは誰もが承知しているし、著名人には何も着飾ることのないプライベートな一面を持っている
ただ一部の過激ファンは自分の抱くイメージからかけ離れた行動や言動をすると暴徒化する
特に行きすぎると終盤にあったありもしないガセネタで陥れようとする輩が現れるのです(あるバンドの騒動なんかもろにそうでしたね…。マスメディアがミスリードしようとしてたし。)
由美子と千佳が通う学校には木村というヲタクと思われるクラスメートがいるのですが、所々で彼は登場し、2人に近付きたくて情報を集めているので、核心に気づいたら僕は一瞬彼が暴走して脅しをかけるのかと思った
でもそれはフェイク
清水という木村のヲタク仲間が恐ろしいんですよ…
彼は日頃から千佳が現れるのを隠し取りする動画を取っていたのですがあるイベント帰りにストーキング
その時にあるアニメの監督と千佳が一緒にいるのを目撃してしまうんですよね…
それが千佳の裏営業疑惑に繋がるのですが…
これホント笑えなくて、声優以外にもバンドマンを出待ちしている方もたまに耳にします
流石に自宅にストーキングまではしないでしょうが、こうしたリスクと隣り合わせで活動している方々は多い
ある意味「こうなってはいけないよ」という提示にも見えます
裏を返せば僕たちは無意識に著名人をアイドルとして見ていること否定できませんがね…
ちなみに裏営業疑惑の真相は意外なものでしたが、千佳のために顔を晒してまで潔白を証明しようと生放送する由美子の行動には熱くなりますよ…!!
2人の関係は次巻以降、どうなるんでしょう
クラスメートにはほぼばれてしまったし、2人にどう接していくかにも注目です
なお最後のラジオは色んな意味でカオスとなります
声優をテーマにしたライトノベルで浮かぶのは同じ電撃文庫で刊行されていた「彼女はつっこまれるのが好き!」
ここのところ、「異世界転生×無双」作品が乱発されるなかでこの作品の存在は今後確実に際立つと思われます
ちなみに作者の二月先生は本作がデビュー作
別名義でも刊行したことはあるそうですが、10年にも渡り小説を応募してきた苦労人です
まさかデビュー作でこんなプッシュがかかるとは思いもしなかったでしょうね…
既にアナウンスされておりますが、この作品の2巻は早くも6月に刊行!!
下手すると来年アニメ化するかもしれない…
ラノベ業界に現れた大型新人のデビュー作、今ならまだ間に合います!!
電子書籍でもいいし文庫本でも良い
今の状況だと書店は営業してないだろうから、気になったらオンラインで注文!!