その選択は確実に間違いだった… 〜「ぼくたちのリメイク 3」感想~
タイトル:ぼくたちのリメイク3
作者:木緒なち
イラスト:えれっと
「ぼくたちのリメイク」3巻
ひとつの区切りになる巻ですが、ラストでとんでもない展開になります
- 新キャラに振り回される恭也達
この巻の大まかな流れは「追い込まれた貫之を救うために同人ゲーム製作をして学費を稼ぐこと」
10年後の世界からタイムスリップしてきた恭也はゲーム会社に勤務していただけにそのアドバンテージを活かす機会がやって来たというわけです
…ですがさあ、ゲーム製作を始めようとした矢先に乱入してきたのが初登場となる慈照寺さゆり
貫之の幼なじみであり許嫁です
2巻の終盤でもサラッと触れられましたが貫之の実家は有名な病院でして、彼女がここに来た理由は貫之を連れ戻すためでもあります
その上で貫之も彼女のことを嫌いではないので邪険に扱えない…
なんとも困った状況です
おまけにさゆりは貫之にベタベタな姿を頻繁に見せるので恭也を巡ったシノアキvsナナコもこの巻から本格的に開戦します(笑)
シノアキが前巻のラストであんな行動に出るから…
まあさゆりは最終的に撤退しますが、その引き金になるのがあの言葉だからな…
人間、地雷を踏むことだけは絶対にやめましょう
- もがきもがくシノアキ達
そんなさゆりが介入しつつもゲーム製作は実行されていくんですが、今まで同人ゲーム作りをしたことがない方からすると中身は衝撃的な訳で
プレイしたことある方なら察するでしょう、あ〜んなシーンやこ〜んなシーンの数々を(笑)
当然貫之達は免疫がないので最初は唖然とするのも無理がない
しかしそれ以上にハッピーエンドに導くまでのストーリーやそれまでのBGMやCGを描くのが本当に難しい
貫之は恋愛関係の作品は書いたことがないので道筋に苦労しますし、ナナコも音楽製作には欠かせないシーケンスに触れるのは初めて
シノアキもこういった作品でデザインするのは初めてなのでやっぱりみんな手探り状態
最初こそ順調に進みますが物事は全て上手くいくとは限らない…
そこで恭也は厳しくなってきた時のための打開策を前もって検討していたのですが…
これが結果的に悲劇の結末を呼んでしまう…
- 恭也が犯した失敗
である意味、この巻の総括になるんですがなぜ恭也が失敗したか
1巻の加納先生の言葉を思い出しましょう
「クリエイターに必要なのは最後まで諦めないことだ」
恭也はこれを終盤に見失ってしまった
締め切りに妥協してしまったんですよ
この作品の比較材料と言うべき「冴えない彼女の育てかた」でも締め切りに終われる場面は何度かありました
けど倫也達って妥協しましたか?
冴えカノのネタバレで申し訳ありませんが、倫也は全ての作品において最後まで諦めなかった
というか中途半端に終わらせたくない執念がありましたよね?
その執念が多くの仲間を惹き付けてきた
協力者は居ましたよ?
でも妥協は一切していない
これが創作において大切なことなんです
その上でこの巻の恭也の行動は逆効果
クリエイターのモチベーションを削ってどうするの?
そこはむしろ締め切りを伸ばせないか交渉するべきだったんです
シノアキや貫之の頑張りに答えるために
それを恭也は無にしてしまったんです
それにゲームや漫画、ライトノベル…
こういった作品は一度市場に出回ったら修正は難しい
だから「やりきったぞ!!」ってなるまで行動しないと後悔します
どんなに売上が良かったからって中途半端な気分で終わったら意味がない
言葉変えるなら最後の最後に民主主義から独裁主義になってしまったってことですよ
その上でこの巻のラスト、タイムリープ作品の常識を大きく覆す事態が発生します
…なぜなら恭也が目を覚ますと…?
次の4巻、とてつもなくヘビーな巻になります
アニメになったとき、この巻を原作にしたエピソードにネットは間違いなく騒然とするでしょう
でも次の4巻は現在刊行されているシリーズで最重要エピソードになります
目を逸らさず、恭也がどうやって再生するかを見守ってください