キャッチコピーがいかに大切か痛感した作品〜「君がいた美しい世界と君のいない美しい世界のこと」〜
タイトル:「君がいた美しい世界と君のいない美しい世界のこと」
作者:神田 夏生
イラスト:Aちき
新年早々のブックオフ、大安売りセールで購入した表紙だけ見て購入したシリーズ第3弾
評価も見ずに購入したので、どんな作品かは購入するまで一切分かりません
ただ、この作品を読んだあとある感想を抱いてしまいました
- 行動手段は徒歩のみ?
この作品の大まかなあらすじは最愛の人三日月緋花里を失った主人公のユウトが世界を「リセット」するために世界で美しいものを探すというもの
後述するクレセントと共に旅に出るわけですが移動手段は徒歩のみ
それがリセットするための条件なんですが、千葉から東京、東京から神奈川を徒歩で移動するのはお察しの通りかなり苦労しますし凡人からすればそんなのお断りでしょう
にもかかわらず、ユウトが旅をするのは「リセット」に僅かでも可能性をかけたいから
最愛の人がいなくなると世界は瞬く間に変わってしまいますからね…※僕の高校の同級生も一度恋人を亡くしている
なぜ移動手段は徒歩のみか?
最初は不明でしたがその理由は後々なんとなく察することができるでしょう
- 緋花里とクレセント
世界で美しいものを探すためにユウトはクレセントと旅に出るわけですが、その向かう先はかつて緋花里と時間を共にした場所
それゆえ、緋花里との思い出が次々に呼び起こされていくんですが緋花里というキャラクターは少し変わった人物だなと感じざるを得ません
中途半端にヒビが入った窓のガラスを砕いたり、2階から飛び降りてヒカリにキスしたり…
まさに破天荒です
でも訪れた学校や喫茶店、公園でのエピソードを見ているとヒカリに対しては一途だったということがよく分かります
第一印象は最悪でも次第にひかれていき、変化したんでしょうね
だからこそ最愛の人を失った悲しみも人一倍大きくなってしまうんですが…
一方のクレセント
猫帽子を被っている不思議な人物なんですがあくまでも猫と主張する
勿論人間なんですが、何時間も何日も歩いても疲れることは全くない凄まじいスタミナの持ち主であることは間違いないでしょう
クレセントとは緋花里が残した手紙を通じて出会うことになるんですが…
- 結局リセットとは
でこの作品のキーワードとなる「リセット」
その意味はほぼそのまんまです
何か大きな意味があると見せかけたフェイントです
でもこれは緋花里が自分がいなくなったあと、ユウトが再生できるように考えた計画なんです
また「新しい色」に出会えるという
要はこの作品は愛すべき人を亡くした少年が再び歩み出すための物語だったというわけです
だからこそ最後の5ページはグッとなる方もいるでしょう
…あのキャッチコピーを知らなければ…
この作品、キャッチコピーとして「最後の5ページであなたは涙する」って書いてあるんですが、正直そうでもない
むしろこのキャッチコピーが仇となってハードルをあげてしまった気がします
そんなに悪い作品ではないんですがキャッチコピーが足を引っ張ってしまった
そういう印象を抱かざるを得ませんでした