「君の名は。」や「天気の子」と異なる新海誠の世界がここに〜「すずめの戸締まり」〜
映画:「すずめの戸締まり」
というわけで見てきました
本来はもう少し後に感想書く予定でしたが、あまりに凄すぎて感想書く優先順位を引き上げました
これは見なければならない映画だからです
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全体的に物語は重い
まず映画の感想を触れぬ前に書かなければならないこと、それは「君の名は。」や「天気の子」とはベクトルが大いに異なるということです
この2作品は序盤は明るくコミカルな雰囲気で進みつつ、中盤から一気に物語が重くなるセカイ系の物語でした
王道といえば王道
王道であるがゆえに老若男女に親しまれるストーリーであるとも言えます
「天気の子」は賛否分かれましたが(あれは「支配からの解放」がテーマだもん。そりゃ評価割れるわ)
anime-manga-lightnovel.hatenablog.com
しかしこの「すずめの戸締まり」はのっけからシリアスな場面が多い
途中、コミカル→シリアスな場面はあるものの、全体的に雰囲気は重め
何と言っても、冒頭から映画の予告編に出てきたシーンが多々現れますからね!!
冒頭の30分からもう衝撃場面の数々
「君の名は。」や「天気の子」のような物語を期待している方には合わない可能性が大いに高いです
恋愛描写ももちろんあるけどね
ストーリ比重率のほうが高くて恋愛要素はそこまで強くないと思います
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キーワードは震災
次にこの物語の簡単なテーマ
ざっくり話すと岩戸鈴芽(以下、すずめ)が災いを封じていた扉を開放してしまって、扉が開かないように活動している宗像草太(以下、そうた)は猫(後にダイジンと命名)によって椅子に
その猫を追いかけたそうたをすずめが追いかけ、災いが起こらないように日本中を回る旅をするといったお話です
一見すると分かりやすいテーマでしょう
ですがこの作品、注意書きが出ているように度々緊急地震速報のアラートがなります
巨大地震を経験された方にはこうしたアラートってトラウマの誘発剤になりかねない
なので映画を見る際に忘れたい記憶が呼び起こされてしまったりとこの時点で受け取り方が大きく別れるのは必須です
更に最深部へ足を踏み入れると、最終的なテーマは3.11.
東日本大震災にたどり着きます
実際に起こった物語を題材にしたアニメといえば「輪るピングドラム」があります
anime-manga-lightnovel.hatenablog.com
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あの作品は地下鉄サリンが題材となりましたが、この作品の場合は東日本大震災によって家も親も亡くした子どもがテーマとなっているのです
特にクライマックスの場面
東日本大震災のニュースの際、テレビで多々取り上げられた場面を連想させる風景が多く出てきます
これを被災された方々がどう見るかですね…
これこそ記憶をフラッシュバックさせられて耐えられない方もいるのではないでしょうか
過去1番に賛否を呼ぶ作品になるのは間違いないです
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戸締まりの意味
そしてこの作品のタイトルである「戸締まり」
僕は真実を逃げずに受け入れ、送り出すことと考えました
何故か
それは主人公のすずめは東日本大震災が原因で母親を失くしてしまい、その現実を受け入れずにいたから
作中、すずめが書いていた絵日記には3月11日から数日間に渡り黒塗りが施されています
これは現実を受け入れられず、逃避したが故に行った行動でしょう
母の死を受け入れらずに冥界を彷徨ったくらいですから
全てのものに平等に死は訪れます
それは誰にも予想できない
その死は暗闇を招き、心に闇をもたらすかもしれない
でもすずめの放った言葉に希望を抱く方もいらっしゃるのではないでしょうか?※ここはネタバレしたくないので伏せます
死を受け入れた過去のすずめを送り出す
それが戸締まりだと思います
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ちなみに…
この作品、本来は百合要素が入った作品になる予定だった作品だったことをご存知の方は多いのではないでしょうか?
なんでもその路線で行きたかったのに関係者に止められたとか…
普通にそっちでも良かった気がするけどな…
だって「リコリス・リコイル」がヒットした直後だし、今やっているガンダムの「水星の魔女」だって百合要素強い
今年やっていた「処刑少女の生きる道」もその方向行ってますからね
もしこれ百合要素強めでやったら日本映画の大きな転換点に出来たかもしれない…
なんか惜しいよな…
ちなみに僕は「ニーナとうさぎと魔法の戦車」でその辺りの描写には耐性がついています
あれはシリアスかつ百合要素も強い作品ですから
本当は別の作品の映画感想を掲載する予定でしたが、これは今年が終わるまでに見てもらわなければならない作品だと思い、急いで感想執筆しました
多少ネタバレは隠せていると思います
これから見る方に注目していただき点は以下の3つ
- そうたが変身させられる椅子
- ネコのダイジン
- 後半の邦楽メドレー
①と②は作中において、かなり重要な伏線です
特に②、予告だけ見ている方は「こいつ元凶だろ?」と思う方もいらっしゃるでしょう
でも後半になったら評価、大いに変わりますよ
僕も驚きましたから
ちなみにそうたはSixTONESの松村北斗が担当していますが、普通に演技良かったです
棒読み一切してないし
これ今後もアニメ関連で呼ばれると思います…
嘘だと思うなら1度劇場で見ましょ?
これが年内最後の大型アニメ映画
これを見ない選択肢は避けるべきです
騙されたと思って見てみましょう
これは傑作です!!
補足
この作品、かなり評価が分かれているようで僕のフォロワーさんのなかには好意的に受け止めていない方もいらっしゃいます
何度も書きますが、これは評価が分かれて当然な作品です
でも感想は見てからにもしましょう
僕は否定的なレビューも読みましたが、腑に落ちる点多かったです
よかったら否定的なレビューも参考に↓
新海誠監督『すずめの戸締まり』レビュー:「平成流」を戯画化する、あるいは〈怪異〉と犠牲のナショナリズム(評:茂木謙之介)|Tokyo Art Beat