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不思議な不思議な三角関係の物語 〜「三角の距離は限りないゼロ」感想〜

タイトル:三角の距離は限りないゼロ

作者:岬 鷺宮

イラスト:Hiten

三角の距離は限りないゼロ (電撃文庫)

三角の距離は限りないゼロ (電撃文庫)

 
三角の距離は限りないゼロ (電撃文庫)

三角の距離は限りないゼロ (電撃文庫)

  • 作者:岬 鷺宮
  • 発売日: 2018/05/10
  • メディア: 文庫
 

電撃文庫の次なるメディアミックス候補作品は間違いなくこれ

最新刊が発売されたばかりの「三角の距離は限りないゼロ」です

度々話してましたが「失恋探偵ももせ」から百瀬、「読者と主人公のこれから」の修司や伊津佳も登場

晃もちらっと出てきますよ

 

  • 幾つものキャラを使い分ける少年と二重人格の少女

この作品の主人公、矢野四季はいくつものキャラを使い分けている少年

そのキャラとはここで説明するよりもコミカライズの1話(コミックウォーカーで無料公開中)を見ていただけた方が分かりやすいので省きますが、いくつものキャラを演じるというのは本当の自分を隠すということ

つまり周囲に見せているのは偽りの姿ということです

 

こうしたキャラを使い分ける人間は特に珍しく有りませんが、その使い分けはだいたい仕事とプライベート

僕も本来人見知りな人間ですが、仕事になるとスイッチを入れて別の人間になっている(周囲には包み隠さず明かしています)ように、大体キャラは2つ、要は表と裏です

でも四季はその名前の通り本来の性格と序盤で演じた3つのキャラを合わせて合計4人のキャラを演じきってる

そうなると当然罪悪感が沸いてくるわけで…※ちなみに志津佳は序盤から登場、そもそもこの作品「読者と主人公のこれから」とリンクしていて、修司も含めこの3人は同じクラスでした

 

そんな彼が一目惚れしたのは同じ高校に転校してきた水瀬秋玻

ただ彼女にも秘密がありました

秋玻は定期的に春珂と入れ替わってしまう二重人格だったからです

 

本来の人格(と思われる)のは秋玻であり、春珂は秋玻のストレスから生まれたもう1つの人格

すなわち、姉妹で例えるなら秋玻が姉で春珂は妹のような存在なんですが、学校内で二重人格を知る方はほとんどいない

そのためバレないように学生生活を送ろうとしたんですが即効でばれてしまったのです…(学校では秋玻で通学しており、春珂の存在は秘密)

 

しかも記憶は別々な上に性格や趣味も正反対なので苦労するのは必然(彼女の部屋は1つの部屋を姉妹で共有しているようなものなので混沌しています)

それは2つのキャラを使い分けているかのようなもの

そんな水瀬に重なるものを感じた四季は彼女たちに協力するようになっていきます…

 

この流れは「読者と主人公のこれから」と似ていると感じる方がいらっしゃるかもしれませんが、あちらは説明書のようなものがあったのに対し、こちらは一定時間で人格が入れ替わる

しかも記憶は共有されないので時子よりも苦労します(汗)

 

それでも交換日記をしたり趣味について共有することによって日々を送っていくのです

 

  • 物語は台場から動き出す

そんな3人の関係に大きな変化をもたらすのは台場

秋玻を四季が好きだと知った伊津佳が「恋のキューピット大作戦!」という名目で四季と秋玻を近づけようとしたのが発端(同時に伊津佳は四季、秋玻、修司の4人で遊びたいんだとも思います)

四季としても春珂に「違う環境に挑戦させる良い機会」と考えていたのですが、春珂が賛成したのに対して秋玻は拒否

しかし最終的には参加することになります

 

で前半は秋玻がショッピングを、後半では春珂がアミューズメントを楽しむのですがこの日の秋玻は調子が悪い…

それは秋玻と春珂が喧嘩したのが原因だと後に分かるのですが…

 

アミューズメントを楽しんだあと、四季と春珂は観覧車を楽しむのですが、そこで四季はは今のように幾つものキャラを演じるようになってしまったきっかけを春珂に聞かれ話すことに

 

それは中学時代に人間同士がレッテル貼りを行いその上で「◯◯はこうすべきでこうすべきではない」という風潮に違和感を持ち、それを指摘したところ、クラスから浮くようになってしまったとのこと

その後、高校で幾つものキャラを演じるようになった結果、楽しめるようになったからこのようになったということですが、こうした光景は現実でもあるんでしょうね

 

階級社会ではありませんが、空気読めない人物は自然に隔離されていく風潮

ぶっちゃけ僕もそうでした

小学校の同窓会とか昔行きましたが僕だけほぼ避けられてましたし

波長が合わないとこういう風にされてしまう…

 

こうした経緯があるから四季は春珂を支援するようになったとのこと

ただこの後、春珂が「秋玻のためにやれること」として四季にキスを提案するのですがこれが思わぬ事態を…!!

  • 避けられない運命を知ったとしても

その翌日から四季は違和感を感じるようになります

本来、春珂が出る時間に秋玻が出るようになっていたからです

最初こそ誤魔化しきれていたものの現代文の授業中に入れ替わりが発生してしまい…(ちなみに現代文の講師は百瀬、学生時代少女漫画を好んでいた彼女が現代文の講師をやっているのは間違いなく九十九の影響でしょう)

 

というのは秋玻と春珂が入れ替わる時間は秋玻のストレスが解消されたことで自然と短くなる運命にあった

要するに入れ替わり時間が0になったとき、春珂が消えることを意味するのです

しかもそこに深く関わっているのはお互いがお互いを尊重できるか

つまり秋玻が春珂を否定すればするほどに時間は短くなってしまう…

それは秋玻も春珂もお互いに支え会うことで水瀬という人間が成り立ち、逆に傷つけあったりすると一気に崩れてしまう…

 

多分これで多くの方が察すると思いますが、秋玻の方が本当は弱いんです

そもそも四季が水瀬を手伝い始めたのは春珂をサポートするためでしたよね?

ということは秋玻は自然とストレスを溜め込んでいく

 

「春珂は助けてくれるのに…どうして私は助けてくれないの!?」

 

といった感じで…

 

終盤、そもそも水瀬が転校してきた理由はリハビリの一環

これは百瀬が四季にだけ明かしたものです(というか水瀬の秘密は一部教員は知ってました)

ただ同時に救えるのは四季だけと明かしたのはいかにも百瀬らしいというか…

 

その後押しもあって、四季は秋玻の本音を引き出しようやく告白したのです(この巻の時点では回答保留になってるけど)

でもこれってただの告白だけじゃない

 

「秋玻を助けたい」

 

という四季の本音も導きだしたのだと考えています

 

その上で、四季も決断します

あの罪悪感から解放されるために…

 

一応僕はコミックウォーカーに掲載されているコミカライズも読んでたりするので大まかな流れは把握してました

ただ、原作1巻には2ページの短いプロローグがあり、そこには四季が書いたと思われる手紙の断片が載ってます

恐らくこれは春珂が消滅する運命は避けられないことを示唆していると思われます

その上で××へと名前は伏せられている

これが水瀬の本当の名前なんでしょう

5巻の試し読みを見たところ、挿し絵に「××ちゃんみたいね」という台詞があったので後半のキーワードになりそうな予感

 

並びに最新5巻のあらすじでは「モラトリアム(心理学的観点では猶予期間を現す)の終わり」が近づいていることを示唆しています

作者の岬先生は以前Twitter「5巻から後半が始まる」とツイートしてました

執筆したのはまだ5巻が刊行される前ですので、何が起こるかは僕にも分かりません

 

青ブタの大ヒットで次なる「日常+ファンタジー」作品として注目されている本作

今ならまだ間に合います

 

ちなみに…最終的に四季は水瀬にキスされますが、このキスを行ったのは秋春か春珂

それはこの時点では僕にも分からない…