聞いてないよ、こんな悲しい結末… 〜「星降る夜になったら」感想〜
タイトル:「星降る夜になったら」
作者:あまさきみりと
イラスト:Nagu
僕は数ヵ月前、こんなツイートをしてました
6月にMF文庫から「星降る夜になったら」というラノベが出るそうで…
— softman@音楽ブログとサブカルブログ (@softman_mfrdkok) 2020年5月13日
作者はフジファブリック好きなのか? フジファブリック好きな方はいろんな意味で注目 pic.twitter.com/RBjR0zVaUi
ラノベの新刊を調べるべくラノベの杜というサイトをよく使用するのですが、そのサイトで見つけたのが今回紹介する「星降る夜になったら」
音楽リスナーならフジファブリックの名曲を浮かべるでしょう
というよりこのラノベを購入する方は、
の何れかじゃないでしょうか
ただこの作品、結末があまりに悲しくて泣けてきます…
ラノベで泣くのって何年ぶりだろう…?
- 出会ったのはたった1人の美術部の部長
この物語の主人公、花菱准汰は高校卒業間近なのに留年しかけている高校3年生
その原因は寝坊やダルさが原因でデッサンの授業をサボっていたから
普通サボるの現代文や数学だと思うんですが(僕はサボったことないので悪しからず)
担任の登坂に居残り補習(といってもデッサンを1枚書くだけ)を命じられたため、しぶしぶ美術室に向かうのですがそこで絵を描いていたのが表紙でヘッドフォンを装着しているヒロインの渡良瀬芳乃
べたチョコと言われるチョコパンを差し入れないと露骨に機嫌が悪くなる癖のある人物であり、美術部部長です
デスノートのLか(Lと言えばお菓子を食べないと推理力が低下する設定あったな)
その芳乃が准汰の補習合格を見極める役割を押し付けられてしまったため、2人は必然的に関わることに
そんな2人でありますが、准汰は一応芳乃の説明を聞いてあげたり、1人しかいない美術部の部員を増やすために協力したりとなんやかんやで面倒見が良かったりします
また、芳乃も星空が広がる日に星空を描いていることを明かしたり、2人で星空を見に行く約束をしたりと少しずつではありますが距離も縮まり、そうした芳乃の行動を見て准汰は好意を抱くようになっていきます
良いよね、仲の良い女子がいるって
しかしそんな楽しい日々はそう長々と続かず…
ちなみに准汰の自宅は喫茶店となっており、母親の燈子は准汰をよくからかってくるのですが、従業員でありロボットのように表情を変えない伊澄の存在が後々重要になってきます
- スノードロップ彗星
この作品で鍵を握るキーワードは「スノードロップ彗星」
閏年の2月に観測できる彗星で願い事を叶えてくれる…
…のですが、その代償は大きく願い事をした人物の感情を奪ってしまうのです
実際、作中でも2名の人物の感情が失われているのですがそのうちの1人が准汰
芳乃の運命を変えるために自分と芳乃が出会わない世界線を願ってしまうんです…
当然、感情を失うリスクは承知
でも好きになった芳乃が死んでしまうのだけは…!!という決死の願いからこれを願ってしまう…
准汰の願いは勿論叶いました
しかし代償は当然大きく…
ここからの展開はもう重すぎて読む際は覚悟が必要かも…
- 佳乃の過去
物語中盤から語り手は芳乃へ
なぜ芳乃がヘッドフォンを着用しているか、べたチョコを好むようになったかが明かされていきますが、芳乃の過去は誰もが目を背けてはならないもの
児童虐待です
ろくな食事も与えられず、母親から邪魔者として扱われるだけの日々
そんな芳乃を救っていくのが登坂
ある意味父親代わり的役割を果たして芳乃の傷を少しずつ癒していく…
その過程でべたチョコやヘッドフォンを与えられるのですが、母親はそれを妨害…
それでも登坂は芳乃を支えるのですが共に支えていたのがまさかの伊澄
登坂が准汰に話していた3つ下の幼馴染みが彼女だったのです…
ですが母親の妨害は続き、しかも病気になってしまった芳乃は報知
これが心臓病に繋がってしまう…
これ書いた時点で感情を失ったもう1人の人物が誰かお分かりだと思われますが、そもそもこうなったのは母親が原因
病に苦しむ子供を見捨てるなんて信じられないと思いますが、こういう方々がいるのも現実です…
こんな生々しい描写見て辛くなった方も多いでしょうね…
また芳乃が星空を描いている描写があったと思いますが、それは准汰に「スノードロップ彗星」を見せるため
この2人、昔会っていたんですね
その上でこの出会いが原動力になっていたと…
そんな2人は高校で再会することになるのですが、芳乃はコミュニケーションが上手くないので准汰と交流は生まれず
一向に話すことができないがゆえに芳乃も彗星を頼ってしまう…
しかしこの願いは准汰によって上書きされなかったことに
というか彗星、いい加減にしろ
星空って一応素敵なイメージなのに、この作品においては悪魔そのものですな
- 改変された世界、そして…
准汰の願いによって芳乃は死ぬことなく生き延びることが出来ました
しかしその後遺症のようなものが芳乃には残るようになります
会ってないはずなのに会っていたかのような記憶を持つようになってしまったのです
要は2つの世界線が存在するようになってしまったということ
「FAIRY TAIL」とか読んだことある人は想像しやすいと思います
魔力がある世界とない世界があったように、こちらは芳乃の願いによって作られた世界と准汰によって作られた世界が想像するようになってしまったということです
芳乃は高校卒業後に美大に入学し、数々の賞を受賞するようになった結果、個展を開けるようになった
更に伊澄とも再会、伊澄は覚えてないようですが伊澄から頂いた手紙には…
一方准汰はというと、食品会社に就職するもあっという間に退職し借金に終われるような日々…
芳乃を救いたい想いが導いた願い事が准汰を狂わせてしまったのです
こんな悲しいことあっていいのか…
なんで願い事が人々を苦しめないといけないんだろう…
その上で芳乃の個展が始まりますが、当然准汰は来ない
でも芳乃は准汰に見せたい絵がある
その絵を見せるために芳乃は行動に出ます
…この悲劇を終わらせるために…
やっと「星降る夜になったら」読み終わった 今年読んできたラノベの中で抜きん出ている…というか最後に泣きました ラノベで泣くのって「放課後のゲームフレンド〜」以来かな? タイトルはフジファブリックへのリスペクト しかし中身は… 勿論ブログで感想書く ただ…頼むから救いをくれよ…
— softman@音楽ブログとサブカルブログ (@softman_mfrdkok) 2020年7月18日
僕はこの本を読了した際、こうツイートしました
終盤、なんとなく結末が予想できても「やめろ、それだけはやめろ…!!」と思いながらページを捲ってました
でもその予感は的中しました…
こんな悲しい結末は「放課後のゲームフレンド〜」以来
でもあの作品はまだ微かな救いがあった
けどこの作品にはそんなものない
残るのは悲しさだけです
しかもそれぞれ、お互いを思いやっての行動…
だから余計に悲しい…
この作品を読むまえに、「終焉ノ花嫁」のまるごと試し読み企画に参加
そのあと「ぼくたちのリメイク」のスピンオフを読んで、この作品を読みましたが現時点で今年ナンバーワン
結末が結末なので単発作品であることは明白 ですが、あまさき先生の他の作品も読みたくなりました
星空と言えばこの作品の出版元であるMF文庫から出ている「君死にたもう流星群」も連想してますが、この作品はそれも遥かに超えてます
あっちは希望あるけどこっちには…
流れ星に運命を弄ばされた悲しき物語
泣けますよこれ…