これは10代後半、20代が見るべき映画であり、ラノベ。〜「夏へのトンネル、さよならへの出口」
タイトル:「夏へのトンネル、さよならへの出口」
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以前↑の記事でも触れましたが、しっかり見てきました
たまたま地元の映画館が火曜日は割引価格で見れるので
ありがとうTジョイ系列
ありがとう109系列
原作はこちら↓
ライトノベル作品の映画化は特別珍しい話ではありませんが、単発作品の映画はそんな多くはありません
特に非テレビシリーズ作品のアニメ化は覚えている限りだと、
↑これくらいかなー
原作はこれ一応持っているんですけどね…
今生活習慣見直している最中で読書時間が得られない状態です
というわけで名前は聞いていたものの、手に取ったことはなかったこの「夏へのトンネル、さよならの出口」を見た感想をざっくり書きます
なお、Wikipediaには思い切りネタバレ載ってるので作品鑑賞前は絶対見ないように
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感想を書く前に
まずこの作品、感想を書く前には絶対に触れなければならないキーワードがあります
それは「ウラシマトンネル」
簡潔に話すと、「願いを叶える代わりに時間を奪われるトンネル」とお考えください
この物語はこのトンネルを軸にストーリーが進行
「星降る夜になったら」の流星群のように大きな代償は無いのかなと思う
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↑これも映像化しましょうよ・・・
ですが序盤の女子高生の会話では、「トンネルを通り過ぎると100年を取る」なんて言われています
願いが叶っても年を取ってしまう
この時点ではあまりメリットが無いように見えますよね?
冒頭では
でも実際はどうなんでしょう…?
※ここからネタバレ解禁します
劇場に行く方は閲覧をここで止めてください
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他人同士から共闘関係に
さてこの作品の中心人物は2人
塔野カオルと花城あんず
共に複雑な事情を抱えている少年少女です
簡単に説明すると、
- カオル→田舎の高校生。昔、不慮の事故で妹を亡くし、父親との関係も良好とは言えない。
- あんず→都会から田舎に諸事情で転校してきた女子高生。両親はいないも同然状態
※作中でカオルとあんずは名前で呼び合うことは1度もありません
2人は大雨が降ったある日、駅構内で初邂逅
あんずは都会から田舎に引っ越してきたので諸事情(イノシシが線路内に立ち入った)で30分も待たされるだけで苛立ち(田舎ではこれだけ待たされるのはよくあることです、ぼくリメの感想でも書きましたが電車本数が少ないから)
大事そうに書類を持っていたので、カオルは傘を貸そうとするのですが、あんずは毒づきまくり
誰に対しても心を開いてないような感じでした
それでも一応カオルから傘は受け取りますが
翌日、あんずはカオルの通う高校に転校しますが、冷たい態度はクラスメイトに対しても
その結果、スクールカースト上位にいる川崎小春に絡まれるんですが、大事な本を馬鹿にされたので殴ってしまう…
初日からやらかしてしまったという訳です
本人は全く後悔していませんが汗(ツッコミは禁止)
ここまで読むと、あんずがよくいる女子高生とは違うことは明白でしょう
にしても現実も転校生に関して、みんな質問攻めするよな…
僕の親友もそんな感じでした※その親友とは今も仲良くしています
一方のカオル
妹のカレンが亡くなったことを契機に家庭が崩壊し、父親とは言えないような父親(あんず転校初日の夜に妹が亡くなった件を責めてきます。酒で潰れている癖に)と同居せざるを得ない少年
こちらもよくいる男子高生とは程遠い日々を過ごしています
しかし酔っ払った父親の行動に恐怖を感じ、家から脱走したカオルが走り回った矢先にたどり着いたのがこの物語の中心、ウラシマトンネル
何故か紅葉に包まれ、写真がツリーに貼られているなど異様なトンネルです
そこで亡くなったインコや妹の靴を見つけるのですが、自宅に帰ってくると1週間が経過…
このトンネルがカオルの日常を変えてしまったといっても過言ではないでしょう
トンネルから帰ってきた翌日には、友人の加賀翔平から当然質問
1週間も失踪したら気になる点山盛りなわけです
ですが放課後にトンネルに赴くと、トンネルの秘密を知らないあんずを発見
慌ててトンネルの外へ連れ出したのでロスは数時間だけで済みました
しかし何が起こったか、あんずは簡単に理解はできるわけなくカオルは説明
普通ならフィクションのような出来事を説明されてもすぐに理解するのは厳しいでしょう
デジモンテイマーズの序盤でタカトがギルモンの存在を信じてもらえなかったように
でもあんずは信用しました
その結果、
- カオル→カレンを取り戻したい
- あんず→特別な才能を持ちたい
という目的のもと、2人は共同戦線を貼ることになるというわけです
そこから2人は、
①どの辺りが時間の境目になるか
②トンネルからメールは送信できるか
③トンネルは地域の文化と繋がっていく
など2人は目的のために日々研究
外野から見ると、付き合っているようにしか見えませんけどね(笑)※「プレロマンス」が起用されるのはこのタイミング
なおあんずは、ちゃんと小春に謝罪しています
原作や漫画だともっと具体的な描写があるのかな?
そうして研究した結果、108秒で3日近く経過してしまうことを推測
作戦決行日も7月の連休と定められました
ちなみにこの作品、時代背景は2005年以前と思われます
何故なら序盤でカオルとあんずが連絡先を交換するシーンがありますが、そこで用いられるのはあのガラケー
懐かしさを覚えてしまいました(笑)
今では当たり前のウォークマンもなく、出てくるのはMP3プレイヤーです
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2人がトンネルに向かう理由
こうしてウラシマトンネルに向かう準備は出来ましたが
でもカオルとあんずの掘り下げがまだ行われていません
なので掘り下げが行われるですが、最初の掘り下げはカオル
掘り下げがなされるのは、作戦決行日前に行われる水族館デート
カオルの目的は「カレンを取り戻すこと」と前述しましたが、カレンは誰かというと、カオルの妹
みんなの幸せを願ってくれるような優しい妹だったとのことです
現実に果たしてそのような妹はいるのでしょうか?
そのような妹がいたら毎日はさぞ楽しかったでしょう
ですがカレンは、ほぼカオルが原因で死亡
カオルと喧嘩したことがトリガーとなり、カブトムシを取ろうと木から落下してしまったのです
病気ならともかく、これはずっと引きずり続ける…
何としてもカオルはカレンを救いたいのも納得
要は死に物狂いなんですよ
あんずからすると「目標に向かってありとあらゆるものを切り捨てられる」も憧れの様ですが
ちなみにこの時点でカオルとあんずは笑っていません
感情喪失しているわけではない
からくりサーカスのしろがねの序盤みたく、笑えない訳ではない※からくり編の序盤までは読んだ
一方のあんず
あんずの目的は「特別な才能を持つこと」ですが、具体的には漫画家になるため
これが判明するのは、最初の作戦決行日である7月の3連休
108秒で3日経過することからので108秒で戻ることを決めていたものの、途中であんずが漫画の原稿を拾い出したため、少し予定は崩れ3連休翌日の朝…
あの父親のことでカオルは帰宅困難
カオルじゃなくてもあの親は親ガチャ外れの筆頭と言えますが、帰宅しにくいカオルを気遣ったのか、あんずはカオルを自宅に招くことになります
こうしてカオルがあんずの自宅を訪問することになったのですが、そこであんずの祖父が漫画家だったこと(ただし両親は祖父をあまりよく思わず死去してもほとんど悲しまない)やカオルが通う学校に転校してきた理由が判明したというわけです
並びに、ウラシマトンネルで拾い上げた漫画の原稿はあんずがかつて書いたもの(確か捨てられたもの)
これが後のキーとなりますが、出版社には応募していません
普通は「応募すればいいのに?」と思うでしょうが、自信がないから応募できてません
漫画家を志す方は非常に多い
漫画家志望の方は痛いほど分かるでしょうし、ずば抜けた才能を欲しがっているあんずに同情する方も多いでしょう
「認められるには特別にならなければならない」
だからトンネルに出向いたわけです
ですが、カオルはあんずの漫画を「複雑な伏線だけど分かりやすい」と評価
認めてくれる人物があんずにはいました
この反応をあんずは喜びます
足をキックして興奮したのがその証拠です
これが交差していた2人の道が外れだすきっかけにもなりますが
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転機
転機が発生するのは、作戦決行日である8/2前
長い間トンネルに籠もるということでカオルはあんずを誘って夏祭りに行きますが、あんずは着物を着用するほど気合を入れて、表情も柔らかくなってくるほど変化
トンネルに籠もる前の思い出作りとはいえ、こうしたあんずの行動は確実に何かの変化を伺わせますが
しかし夏祭りを満喫した日の帰り、カオルの自宅には父親が連れ込んだ新しい母親になるであろう人物がいました
しかも父親は
「東京(だったかな?自信ない…)に引っ越そう」
まるで打ち切り漫画のような台詞ですが、この一言は凶器も同然
なぜならカレンの存在を忘却されてしまうようなもの
1人置いて行かれているような気分になってしまったのでしょう
ですのでカオルが嘔吐するのは無理もありません
この嘔吐に父親は激昂しますが、父親はカレンの死から立ち直ったという示唆でもあります
最悪な親であることには、代わりありませんけどね
というか父親ですらない
更にその数日後、喫茶店であんずは、自身の漫画が編集の目に止まり、編集が付くことが報告
めでたいことです
カオルも祝福しています
でも決行日の延期もカオルは提案
それはカオルの周囲があまりに変化しすぎて混乱していること、あんずはもうトンネルが必要ないであろうことを示しているんでしょう
あんずは気付かず反発してしまいますが…
それでも食事をしてなんとか冷静にはなりました
ただ、2人の出会いを駅で再現した帰りの翌日、カオルはあんずを置いてウラシマトンネルに…
当然あんずは怒って怒りのメールを送り続けますが、カオルがあんずを裏切ったのには理由があります
あんずはもう特別な存在になれたからトンネルに入る必要はないのです
だから巻き込む訳にはいかないという結論からでしょうが、カオルはここで携帯も捨てています
巻き込まないためとは言え、ここまでするか…?
けれどもそこまでするには確信があったのです
「失ったものを確実に手に入れられるトンネル」という確信が
あんずがかつて執筆した漫画の原稿がれっきとした証拠です
この物語のテーマはこの辺りではっきり出ます
1つは「誰かの特別になる物語」ということ
このテーマは「輪るピングドラム」に近い点がありますが、あれは何者にもなれなかった冠葉と晶馬が愛される存在になる物語
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こちらは誰かに見つけてもらうという意味の特別です
しかしテーマはもう1つあります
なお、作戦決行日の8/2は妹の命日
あんずは夏祭りの日に知らされましたが、それは過去を書き換えるためにこの日を選んだのではないでしょうか?
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2人が再び交わる日
あんずとの繋がりも捨てて、トンネルを進んだカオル
カオルは本当にカレンが生きていた場所にたどり着きました
要はカレンと再会することは出来たのです
後はここからカレンをどう連れ出すか
ですが、そんな時目の前には捨てたはずの携帯が
しかもそこにあんずからのメールが次々と…
あんずは高校を卒業し、連載作家にもなれました
「そのトンネルのお陰で夢を叶えた=特別な存在になれた」と考えると、トンネルは決して悪ではないと考える事ができます
悪ならメールを受信させないでしょうし
ではなぜカオルはあんずからのメールを受信できたか?
それはカオルにとってあんずが特別だと分からせるためだとしたら…?
しかもカレンもカオルの背中を後押し
恐らくウラシマトンネルは、「時間を代償に特別になることを後押しするトンネル」だからではないでしょうか?
ここでこの物語のもう1つのテーマ
それは「開放」です
あんずはカオルから漫画を褒められることで「自分の漫画自信を持てるように」=「出来ないという思い込み」から開放されました
一方のカオルは「カレンに依存」してました
カレンが亡くなってからもカレンを求め続けるのは依存し続けるということ
ただ、それを変えたのがあんずの存在
無意識のうちにあんずへの想いが形成され、あんずのことは切り捨てたはずなのにカレンとの会話であんずのことを思い出した
それはあんずのことが「好き」だったからなんですよ
夏祭りにあんずが着物を着てきたのは、あんずはカオルが好きになっていたから
カオルはあんずの「特別」になった
これによって、カオルはカレンへの依存から抜け出せたという訳です
そしてカオルはあんずにメールで想いを伝え、連載が見送りとなって初めてカオルとあった駅で泣き崩れていたあんずはカオルのメールをきっかけにトンネルへ
カオルはトンネルから出口に向かう最中、転倒してしまうものの、気が付いたときにはあんずが
14年も時間は経過してしまいましたが、ようやく想いが通じた2人はキスしてトンネルを抜け出したところで物語は終わります
カレンとさよならして
でこの物語は、個人的に20代や10代ほど見るべきと思いました
それはウラシマトンネルを除けばかなり現実的な部分が多いからです
この物語でカオルとあんずはそれぞれの目的へ向かっていますが、そのためにはありとあらゆる時間を費やしています
当たり前であって、これは簡単にできることではないんです
現代を生き抜く人ってアイデンティティを残したい方が多いでしょうが、そのためには必死さが必要なんです
自分はこの映画を見てから生活習慣を少し見直しました
今はとにかく目標最優先で動いています
逆算していくんです
未来を楽にするために
スケジュール管理、かなり見直しましたからね
この映画見なかったら怠けたままだっただろうな…
現実を見つめ直したい方には非常に向いている映画と自分は考えました
もちろんアニメ映画が好きな方にもオススメ
ライトノベルが好きな方にも
シンプルで分かりやすい物語だと思いました
この記事が公開される頃には上映数、かなり減っていると思われますが興味ある方は早めに映画館へ
もしかしたら特典小説まだ残っている可能性あります…
とてもいい作品でした…
では!!
10/22追記
僕がやっている音楽ブログの方に主題歌や挿入歌の感想を掲載しました
よろしければそちらも是非↓
夏トンの挿入歌と主題歌の感想〜2022年楽曲感想 その73〜 | musicfreedom -keep on,keep on- (ameblo.jp)